「ふくい桜マラソン」からの便り

さいごのピースが カチっとはまる

福井裁判所(約1.5K地点)

「福井大仏」から500mくらい先の走行方向・左手に見える風格のある建物が(福井地方)裁判所です。



ラソンコースの「さくら通り」と、福井鉄道路面電車)が通る「フェニックス通り」の交差点にあります。

古そうな建物ですが、ここも戦災(空襲)で焼失し、さらに震災(福井地震)で倒壊しています。1954年1月に再建され、現在使われている裁判所としては日本一古いらしく、味のある外観はなかなかのものです。

この福井裁判所に関して強く記憶に残ることがあります。
福島第一原発事故のあと、初めての「原発の運転差し止めを求める訴訟の判決」です。関西電力大飯原発」3,4号機の運転差し止めを命じた福井地方裁判所の判決(註1)です(樋口英明裁判長)、2014/05/21のことになります。
(判決内容詳細は下記の(註1)をご参照ください。)

その後、この仮処分決定から8カ月余りの2015/12/24、同じ福井地方裁判所(林潤裁判長)において、一転して、関西電力が申し立てた異議を認め仮処分を取り消す決定(註1)(再稼働を法的に可能とした)を出しています。


ちなみに下記は、2022/07~現在の福井県での原子力発電所の稼働状況です。
(「関西電力原子力発電所運転出力リアルタイム表示」のWeb

福井県内には、現在15基の原子力発電所があり、そのうち7基が廃止措置(廃炉作業)に移行しています。
県内のすべての原発が、敦賀から西の嶺南地方(註2)にあり、福井市を含む嶺北地方(註2)にはありません。

(斜体の黒:運転終了、太字の赤:運転中、通常表示の青:定期検査、で表示しています)
線は、稼働が40年以上の原発)

関西電力・高浜原発高浜町
  1号機 運転中(2023/07/28~12年7ヶ月ぶりに再稼働)
      (1974年運転開始、稼働40年以上、国内で最も古い原発

  2号機 運転中(2023/09/15~11年10ヶ月ぶりに再稼働)
      (1975年運転開始、運転開始から47年)

  ③3号機 運転中(2022/07/24~再稼働)
  ④4号機 運転中(2023/03/25~再稼働)
関西電力大飯原発おおい町
  ⑤1号機 廃止措置中(運転終了)
  ⑥2号機 廃止措置中(運転終了)
  ⑦3号機 運転中(2022/12/16~再稼働)
  ⑧4号機 運転中(2022/07/15~再稼働)
関西電力美浜原発美浜町
  ⑨1号機 廃止措置中(運転終了)
  ⑩2号機 廃止措置中(運転終了)
  3号機 運転中(2022/08/30~再稼働)(稼働40年以上)

岸田文雄首相は「できる限り多くの原発の稼働を進め」るとして(2022/07/14記者会見)、
 2022年冬には、美浜原発3号機、大飯原発4号機、高浜原発3、4号機の再稼働が見込まれている。
 (その後の「福井の原発稼働状況アーカイブ」)

日本原子力発電敦賀原発敦賀市
  ⑫1号機 廃止措置中(運転終了)
  ⑬2号機 停止中(定期検査中)
日本原子力研究開発機構 「もんじゅ」(敦賀市
  ⑭廃止措置中(運転終了)
日本原子力研究開発機構 「ふげん」(敦賀市
  ⑮廃止措置中(運転終了)

 


今回はちょっと固い話になりましたが、約1.5K地点、通過です。




(註1):「判決要旨」
この判決の、判決要旨の抜粋を載せますので、ご興味ある方はご覧ください。
下記は、2014/05/21の判決(樋口英明裁判長)の「判決文要旨」から抜粋したものです。

(「判決文要旨」全文は、こちらのWebよりご覧ください。⇒ 
NJP(NEWS FOR THE PEOPLE IN Japan)より引用)
(また、2015/12/24の「決定要旨」(林裁判長)の全文は、こちらのWebよりご覧ください ⇒ NIP(NEWS FOR THE PEOPLE IN Japan) より引用)

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2014/05/21大飯原発3、4号機運転差止請求事件判決要旨』 からの抜粋(抜粋および太字の強調は引用者です)

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  主文

  • 大飯発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない。

    ーーーーーーーーーーーー

  • ひとたび深刻な事故が起これば多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす事業に関わる組織には、その被害の大きさ、程度に応じた安全性と高度の信頼性が求められて然るべきである。このことは、当然の社会的要請であるとともに、生存を基礎とする人格権が公法、私法を問わず、すべての法分野において、最高の価値を持つとされている以上、本件訴訟においてもよって立つべき解釈上の指針である。
  • 個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、各人の人格に本質的なものであって、その総体が人格権であるということができる。人格権は憲法上の権利であり(13条、25条)、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない
  • 原子力発電所に求められるべき安全性、信頼性は極めて高度なものでなければならず、万一の場合にも放射性物質の危険から国民を守るべく万全の措置がとられなければならない。
  • 原子力発電所の稼動法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由(憲法22条1項)に属するものであって、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものである
  • しかるところ、大きな自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が極めて広汎に奪われるという事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故のほかは想定し難い。かような危険を抽象的にでもはらむ経済活動は、その存在自体が憲法上容認できないというのが極論にすぎるとしても、少なくともかような事態を招く具体的危険性が万が一でもあれば、その差止めが認められるのは当然である。

  • 原子力発電技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさは、福島原発事故を通じて十分に明らかになったといえる。
  • 被告は、700ガルを超える地震が到来した場合の事象を想定し、それに応じた対応策があると主張し、これらの事象と対策を記載したイベントツリーを策定し、これらに記載された対策を順次とっていけば、1260ガルを超える地震が来ない限り、炉心損傷には至らず、大事故に至ることはないと主張する。
  • 地震によって複数の設備が同時にあるいは相前後して使えなくなったり故障したりすることは機械というものの性質上当然考えられることであって、防御のための設備が複数備えられていることは地震の際の安全性を大きく高めるものではないといえる。
  • 被告は、大飯原発の周辺の活断層の調査結果に基づき活断層の状況等を勘案した場合の地震学の理論上導かれるガル数の最大数値が700であり、そもそも、700ガルを超える地震が到来することはまず考えられないと主張する。
  • 大飯原発には1260ガルを超える地震は来ないとの確実な科学的根拠に基づく想定は本来的に不可能である
  • 1260ガルを超える地震大飯原発に到来する危険がある
  • たとえ、過去において、原発施設が基準地震動を超える地震に耐えられたという事実が認められたとしても、同事実は、今後、基準地震動を超える地震大飯原発に到来しても施設が損傷しないということをなんら根拠づけるものではない
  • この地震大国日本において、基準地震動を超える地震大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにしかすぎない

  • 使用済み核燃料プールから放射性物質が漏れたときこれが原子力発電所敷地外部に放出されることを防御する原子炉格納容器のような堅固な設備は存在しない
  • そのようなものが、堅固な設備によって閉じ込められていないままいわばむき出しに近い状態になっているのである。
  • 使用済み核燃料は本件原発の稼動によって日々生み出されていくものであるところ、使用済み核燃料を閉じ込めておくための堅固な設備を設けるためには膨大な費用を要するということに加え、国民の安全が何よりも優先されるべきであるとの見識に立つのではなく、深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しのもとにかような対応が成り立っているといわざるを得ない。

  • 国民の生存を基礎とする人格権を放射性物質の危険から守るという観点からみると、本件原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない。

  • 被告は本件原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。

  • また、被告は、原子力発電所の稼動がCO2排出削減に資するもので環境面で優れている旨主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである

  • 福井地方裁判所民事第2部
    裁判長裁判官 樋口英明
    裁判官 石田明
    裁判官 三宅由子

 

2012/06/16:福島第一原発事故(2011/03/11)後、政府(当時、民主党政権野田佳彦首相)は、関西電力大飯原発3,4号機の再稼働を決定し、2012/7月に両機とも発電送電が開始され、これに対し、福井県の住民ら183人が運転差し止めを求めて訴訟を起こしている。

上記の判決は、この訴訟に対するもの。

その後、
2018/07/04:2014年5月の一審判決に対しての控訴審判決が、名古屋高裁金沢支部であり、内藤正之裁判長は運転差し止めを命じた一審・福井地裁判決を取り消し、住民側の請求を棄却。
「判決要旨」(「京都脱原発原告団」のWebより引用)

2018/07/17:住民らの運転差し止め請求を棄却した名古屋高裁金沢支部判決について、住民側は最高裁への上告を見送ると発表。理由は、『もし最高裁で敗訴が確定すれば、各地の同種訴訟などが「一斉に大きな制約を受けるリスクを負う」』と説明。

 



(註2):「
嶺南」(れいなん)と「嶺北」(れいほく)

福井県では、県を北と南に二分して、「嶺北」と「嶺南」に分けている。現代の行政区分ではなく、昔の「若狭(嶺南)」と「越前(嶺北)」の区分けが反映されている。天気予報などで「嶺北」と「嶺南」の言葉が必ず出てくる、ちなみに、他の北陸地方の天気予報では、石川県で「加賀」「能登」、富山県で「東部」「西部」と区分けされている。

「嶺南」「嶺北」の《嶺》はどこなんだ、どこで区切られているのか、というと、《
木の芽峠》が《嶺》にあたる。北陸本線で、金沢に向かう列車が敦賀駅を出てすぐ入る長いトンネル(北陸トンネル)の地上部あたりに《木の芽峠》がある。昔は、この峠が、若狭から越前をつなぐ、主要な街道であった。

ラソンコースの福井市丸岡城のある坂井市は「嶺北」となる。敦賀から西(滋賀県の北、京都府の北)が「嶺南」、敦賀から東または北(岐阜県の北、石川県の南)が「嶺北」となる。

1960年代、「嶺北」にも、原発建設の候補地(正確には立候補地)があったと聞くが、堅固な岩盤が発見されず、話はなくなったと聞いている。



「木の芽峠」近くの「鉢伏山」(標高761m)(嶺北の南端)から敦賀半島越しに、嶺南の若狭湾方向を見ています。

福井県敦賀湾そして若狭湾、きれいなところです。
福井県・嶺南は、福島県以上の「原発銀座」です。